結成趣意

シュタイナー教育実践研究会 結成趣意書

 

■教育の現場から

本県の教育は、様々な課題を抱えつつも、教育関係者及び保護者の努力により、子どもの主体的・対話的な学びと教師の創造的な授業作りを目指す方向性を見せています。県の研究活動としても「専門的に研究し、創造性を生かした学習指導の充実を図る。」(沖縄県研究指定実施要項より)という、より深い学びの傾向が見えてきました。さらに道徳の教科化に基づき、心の教育が再認識されようとしています。

 

■シュタイナー教育とその現状

シュタイナー教育は、その奥深さから実践が難しいとも言われますが、「深い人間本質理解に基づく教育」と説明することができます。その本質への理解があれば、多くの学習メソッドを、その場に応じた最適な形へ応用することが可能です。また、教科における心の状態をとても大切にします。子ども達により良い教育を提供したいと考えた場合、これほど有効なものはありません。

わが国では、今から約40年前『ミュンヘンの小学生』(子安美知子)により紹介され、人間の持つ根本的な力を開花させ、自由で平和な未来を創造する理想の教育としてブレイクし、各地に研究会や教育の場が生まれました。その後、地道な研究と努力が始まりました。そして学校設立の規制の多い我が国でも、現在2校の学校法人を含む12校のシュタイナー学校が設立されました。そのほか土曜クラス、絵画教室等の関連教室においては数百といわれています。

世界的には、2010年76ヵ国で1000校を超え、特定の宗教に関わらない私立学校としては世界最大となりました。国連ユネスコ報告書 (1997年)によって、21世紀の教育のあるべき姿を示す教育実践として推奨され、ユネスコスクールとしても認証されています。

 

■本県におけるシュタイナー教育の状況

本県においても1980年代から様々な講演会や研究会、読書会が行われました。

その中でも長く研究を続けている沖縄シュタイナー学習会「グラダリス」は、神奈川県シュタイナー学園で中心的に活動・指導を行っていた故不二陽子氏を中心に20年にわたりシュタイナーの思想・教育・実技を研究してきました。短期セミナーを含めるとのべ300人以上が学んでいます。現在は、東京理科大学 井藤 元氏との学びを続けています。

また、琉球大学においては、人間科学専攻人間行動領域のシュタイナー研究者寺石悦章氏によって、教員免許更新講座でシュタイナー教育が紹介されています。

子どもと関わる現場では、2001年首里にシュタイナー幼稚園こども園「まある」が開園し、現在までに120人以上の卒業生と園児が豊かな幼児期を送っています。

2015年には、「まある」の卒園児保護者を中心に、北中城村で沖縄シュタイナー教育「こもれび土曜教室」がスタートしました。現在、1.2年生7、人3.4年生6人が郷土に根差したエポック授業を中心に学んでいます。

公立学校においても、シュタイナー教育を取り入れた授業が試みられています。県内の公募教育論文として、小学校漢字指導「意欲が持続し,育つ思考力をつける授業の研究~シュタイナー教育の人間観・教育観に基づいた国語科の授業実践から~」2013、小学校物語文の指導「~シュタイナー教育の人間観・教育観に基づいた国語科『ごんぎつね』の授業実践から」2015、中学校数学「数学の良さを実感させ、興味関心を高める学習指導の工夫~数学の不思議・美しさを感じさせる指導を通して~」が公表されました。

このように、本県の教師・保護者が、子どもへのよりよい学びを提供し、笑顔あふれる教室と家庭をめざす、基礎的な素地と思いが十分準備されてきている現在、さらにこれらの取り組みを前にすすめるべく、以下の要綱で実践に重点を置いた研究会を結成する運びとなりました。

 

■研究会の目的

  1. 子どもの可能性に畏敬の気持ちを持ちつつ、慈しみの心と自信を持って、子どもと関わっていける自己研鑚の場とする。

  2. 沖縄の地で育つ子ども達が、自らの思いと力で周りの人々と共により良い社会を築いていける「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた教育実践を目指す。

 

■研究会の具体的活動(前述の目的を達成するために) 

① シュタイナーの深い人間洞察に基づいた子ども理解とその方法を研究する。

② シュタイナー教育の根本的な指導方法を研究する。

③ シュタイナーの子ども観や指導方法に基づいた具体的な教育技術や授業方法を研究する。

④ ①②③を実際の児童・生徒、学校、地域にあてはめた学級経営、授業を創造し実践する。

⑤ それらの実践を会員間で分かち合い、互いの実践を支え、より高めていく。

 

本研究会では、小さな研究の積み重ねと沖縄独自の実践の創造を行っていきます。そして継続的に子どもに関わる皆さんへ、シュタイナー教育にふれる場を提供していきたいと考えています。

さらなる成長の場として、行動し、繋がっていく研究会が始動します。

 

趣旨に賛同なさる方々の積極的参加を期待します。 

 

会長   加納 貢  宜野湾市教育委員会
副会長  城間すみ恵 宜野湾市立大謝名小学校
理事長  高江洲頼子 沖縄大学
事務局長 上原玲子  宜野湾市立普天間小学校